いまさら人に聞けない漢詩

春眠暁を覚えず

春暁 孟浩然


春眠不覺曉 / 處處聞啼鳥 / 夜来風雨聲 / 花落知多少


(春眠暁を覚えず 処々啼鳥を聞く 夜来風雨の声 花落つること知る多少)

秋浦歌 李白


白髪三千丈 / 縁愁似箇長 / 不知明鏡裏 / 何処得秋霜


(白髪三千丈 愁いに縁りて箇の似く長し。知らず、明鏡の裏。何れの処にか秋霜を得たるを。)

静夜思 李白


床前看月光 / 疑是地上霜 / 挙頭望山月 / 低頭思故郷


(床前、月光を看る。疑うらくは是れ地上の霜かと。頭を挙げては山月を望み、頭を低れては故郷を思う)

さよならだけが人生だ

歓酒 干武陵


勧君金屈巵 / 満酌不須辞 / 花発多風雨 / 人生別離足


(井伏鱒二訳)
(この盃を受けてくれ / どうぞなみなみつがしておくれ / 花に嵐のたとえもあるさ / さよならだけが人生だ)

国破れて山河在り

春望 杜甫


国破山河在 / 城春草木深 / 感時花濺涙 / 恨別鳥驚心
烽火連三月 / 家書抵萬金 / 白頭掻更短 / 渾欲不勝簪


(国破れて山河在り 城春にして草木深し 時に感じては花にも涙を濺ぎ 別れを恨んでは鳥にも心を驚かす 烽火三月に連なり 家書萬金に抵る 白頭掻くに更に短く 渾べて簪に勝えざらんと欲す)

金州城  乃木希典


山川草木轉荒涼 / 十里風腥新戦場 / 征馬不前人不語 / 金州城外立斜陽


(さんせんそうもくうたたこうりょう  じゅうりかぜなまぐさししんせんじょう  せいばすすまずひとかたらず  きんしゅうじょうがいしゃようにたつ)

爾靈山 乃木希典


爾靈山險豈難攀 / 男子功名期克艱 / 鐵血履山山形改 / 萬人齊仰爾靈山


(にれいざん けんなれどあによじがたからんや だんしこうみょうこくかんをきす てっけつやまをおおいてさんけいあらたまる ばんにんひとしくあおぐにれいざん)



年年歳歳 花相似たり

代悲白頭翁  劉希夷 (読み下しのみ)


洛陽城東 桃李の花 飛び來たり飛び去り 誰が家にか落ちん

洛陽の女児 顏色を惜しみ  行き逢う落花に 長歎息す

今年 花落ち顏色を改め  明年 花開いて復た誰か在らん 

已に見る 松柏摧れて薪と為るを 更に聞く 桑田變じて海と成るを 

古人また洛城東に無く  今人また落花風に対す

年年歳歳 花相似たり  歳歳年年 人同じからず 

言を寄す 全盛の紅顔子  應に憐れむべし 半死の白頭翁 

此の翁の白頭 真に憐むべし  これ昔 紅顔の美少年

公子王孫 芳樹の下  清歌妙舞 落花の前

光禄池臺に錦繍を開き  將軍樓閣に神仙を畫く 

一朝病に臥して相識るなく  三春行樂 誰が邉(ほとり)にか在る 

宛轉たる蛾眉 能く幾時ぞ  須臾にして鶴髪は亂れ絲のごとし 

ただ看る 古來歌舞の地  ただ黄昏 鳥雀の悲しむ有るのみ

べんせいしゅくしゅく

不識庵 機山を撃つの図に題す 頼山陽


鞭聲粛粛夜過河 / 暁見千兵擁大牙 / 遺恨十年磨一剣 / 流星光底逸長蛇


(べんせいしゅくしゅくよるかわをわたる あかつきにみるせんぺいのたいがをようするを いこんじゅうねんいっけんをみがき りゅうせいこうていちょうだをいっす)

抜山蓋世の詩

虞や虞や汝を如何せん

垓下の歌  項羽


力拔山兮氣蓋世 / 時不利兮騅不逝 / 騅不逝兮可奈何 / 虞兮虞兮奈若何


(力は山を抜き、気は世を覆う  時に利あらずして騅逝かず   騅逝かざるを如何すべき   虞や虞や汝を如何せん)